腫瘍の治療は三本柱


治療方法には根治療法、緩和療法、予防治療と何を目的にするか明確にすることでその方法が変わります。

もちろん適応や非適応などがありますが最も大きな意義としては

「QOL=生活の質」の向上です。

 

腫瘍疾患は生活の質を著しく落とすばかりではなく、重大な機能障害を伴うものまでさまざまです。

そのため、腫瘍の性質や挙動、それに伴って現れる症状を把握する​ことがとても重要になります。

 

よく、「進行が速いから悪いものだ」ということを耳にすることがありますが、実は進行の早いものほど炎症性疾患であることも多く、

見た目や挙動からすべての腫瘍を見つけられるわけではありません。

​ですので、必ず生検を行いその主要の大まかな性状を把握することがその後の治療方針を決定するうえで重要になります。

緩和治療:症状や苦痛の軽減、機能回復を目的とした治療

・根治療法の適応ではない
・すでに転移している
・転移が免れない
・全身性の腫瘍
・完全切除が困難な部位での発生
・重大な併発により根治治療が困難

​このような場合が対象となり、必ずしも生存期間の延長は伴わないが生活の質の向上を目的とした治療方法である

根治治療:腫瘍の根絶を目的とした治療

・転移していない
・遠隔転移率が低い
・手術が実施しやすい部位
・孤立性で非浸潤性

​飼い主様の同意のもとではあるが、昨日欠損や外貌の変化、一時的な生活の質の低下が起こる可能性はあるものの、体から腫瘍を完全に切り離すことができる唯一の治療方法である。

予防的治療:腫瘍の発生率低下を目的とした治療

・早期の避妊手術の実施(卵巣腫瘍、乳腺腫瘍の予防)
・去勢手術(精巣腫瘍、肛門周囲腺腫の予防)

予防啓発や健康診断、情報提供など、現在動物たちの腫瘍性疾患における様々な知識を飼い主様と共有し、早期に発見、治療を行うことがのぞましい。

腫瘍の悪性度評価

腫瘍の分類には古くからTNM分類が利用されており、

腫瘍の性質、領域リンパ節の評価、遠隔転移の有無で臨床ステージを決定します。

 

ステージⅠ:局所に限局した腫瘍

ステージⅡ:領域リンパ節に浸潤した腫瘍

ステージⅢ:ステージⅡより広範囲に浸潤した腫瘍

ステージⅣ:遠隔転移のある腫瘍

 

ステージⅠでは根治できる可能性が高かったケースもステージⅢだと根治が難しくなります。

 

また、ステージⅡからは外科手術に加えて

抗がん剤や放射線療法を併用することを考慮する必要があり、ステージⅢではそれらが必須となることもあります。​

T ​原発巣の評価

視診:体表面にできた腫瘍の形、大きさ、色、固着の評価
レントゲン・エコー検査:内臓や骨など、体内にできた腫瘍の確認、周囲組織への浸潤の確認
高度画像診断:CT検査、MRI検査、レントゲンやエコー検査で確認できない腫瘍
血液検査・骨髄検査:​血液・リンパ系の腫瘍

細胞診検査
腫瘍に細い針を刺して細胞を採取し、腫瘍がどのような細胞で構成されているかを評価します。
・腫瘍と炎症、過形成などの鑑別
・腫瘍の良性と悪性の鑑別
・腫瘍の種類の鑑別​細い針を刺して検査をするので体への負担は少ないですが、細胞が少量しか取れないため、診断制度は高くありません。

組織生検
腫瘍の一部を切り取り、病理検査を行います。
​細胞診検査よりも大きい組織を採取できるので診断制度は高くなりますが、全身麻酔が必要になる場合が多いので基礎疾患や動物の状態を把握しなければ実施できません。

N ​リンパ節の評価

腫瘍の主な転移経路の一つにリンパ管を介したリンパ節転移があります。
リンパ節への転移は、腫瘍に近いリンパ節から浸潤していきます。
そのため、腫瘍の進行度を把握する上で、リンパ節の評価は重要となります。
体表のリンパ節については触診で、体内のリンパ節についてはレントゲンや超音波検査などで、リンパ節の増大を確認します。
リンパ節の大きさ、硬さなどを確認し、必要に応じて細胞診検査や組織生検を行い、リンパ節への腫瘍の浸潤の有無を確認します。

M ​遠隔転移の評価

原発部位から離れた臓器への転移の有無を確認します。
遠隔転移の確認はレントゲンやエコー検査を行います(CTを実施する場合もあり)。
リンパ節の評価同様、遠隔転移の有無も腫瘍の進行度を把握する上で重要となります。
一般的には肺への転移が多いですが、腫瘍の種類によっては肝臓、脾臓、骨などの部位で起こることがあります。

根治治療緩和治療


腫瘍が見つかった場合、根治治療にすすむのか緩和治療にすすむのかは飼い主様とのお話し合いによって決めることが多くあります。

 

根治治療と緩和療法のそれぞれにおけるメリットとデメリットを理解していただき、そのうえで治療方針を決定いたします。

 

​根治療法は加藤、緩和治療は倉本が担当し、それぞれに飼い主様のご希望に沿った形での選択しをご提案いたします。

 

外科的切除を行う場合は、その腫瘍が外科的切除が適応なのかをよく検討したうえでご提案させていただきます。

 

腫瘍外科は長時間に及ぶこともあるため、当院の麻酔専門医が適切な麻酔管理を行います。

 

切除範囲やその後の抗がん剤、放射線療法などもご提案する場合もございます。

 

​手術となると心配や不安も大きくあると思いますが、どんなことでもまずはご相談ください。​

 

加藤

 

緩和治療を行う場合は、根治治療におけるメリットより

デメリットを重視した場合に適応になります。

 

ですので長期間に及びぶ治療が必要となることも多くあり、

外科治療との併用で長期間のQOL向上が認められる場合や、

遠隔転移がある場合でもQOLを長く保つ可能性もございます。

 

緩和治療には内科療法やサプリメント、温熱療法などを組み合わせながらその腫瘍の増大を抑えること、

そして本人の免疫力を向上することによって効果を得られるものもございます。

​腫瘍との付き合い方について、一緒に考えましょう。

 

倉本

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