札幌で避妊・去勢手術をお考えの方へ|手術の目的・時期・流れを詳しく紹介

「避妊・去勢手術を受けさせたほうがいいのだろうか…」
そんなふうに悩まれている飼い主様は少なくありません。大切な家族である愛犬・愛猫に手術を受けさせることに不安を感じるのは当然のことです。
しかし、避妊・去勢手術は単に繁殖を防ぐためだけの処置ではありません。将来的に起こりうる病気の予防や行動面でのトラブルの軽減など、健康で穏やかな暮らしを支えるための大切な選択でもあります。
今回は、避妊・去勢手術について、そのメリットや手術の流れ、術後のケアまで解説します。
■目次
1.避妊・去勢手術のメリットと適切な時期
2.避妊・去勢手術に関する誤解と真実
3.避妊・去勢手術の流れと準備
4.手術後のケアと注意点
5.避妊・去勢手術に関するよくある質問
6.まとめ
避妊・去勢手術のメリットと適切な時期
<避妊手術>
メスの避妊手術(子宮・卵巣の摘出)には、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などの重大な病気を予防する効果が期待できます。特に乳腺腫瘍については、早い時期に避妊手術を行うことで、発症リスクを大きく下げられることがわかっています。
具体的には、初回発情前(生後6か月頃)に避妊手術を受けた場合、乳腺腫瘍の発症リスクが約99%減少するとされており、初回発情後〜2回目発情前であっても、約90%のリスク減少が見込まれています。
<去勢手術>
オスの去勢手術(精巣の摘出)には、精巣腫瘍の予防に加えて、マーキング行動の軽減、発情によるストレスや攻撃性の抑制といった行動面でのメリットもあります。
手術の実施時期については、前述のように初回発情前(生後6か月前後)に行うことで病気予防の効果が高まるとされていますが、体の成長具合や体重、健康状態などによって最適なタイミングは一頭一頭異なります。
そのため、動物病院での相談を通じて、愛犬・愛猫にとって最もよい時期を見極めていくことが大切です。
避妊・去勢手術に関する誤解と真実
避妊・去勢手術については、「性格が変わってしまう」「太りやすくなる」「一度は出産させるべき」といった、さまざまな噂や不安の声を耳にすることがあります。
まず、「性格が変わる」という点についてですが、これは発情や性ホルモンの影響による一時的な攻撃性や落ち着きのなさが軽減されることに由来するものです。手術によって性格そのものが大きく変わることはありませんので、過度に心配する必要はありません。
「太りやすくなる」という点についても、確かに手術後は代謝がやや低下することがありますが、食事量や運動量をきちんと調整することで、肥満は十分に防ぐことができます。
また、「一度は出産させるべき」という考えについては、医学的な根拠はありません。むしろ、早期に避妊手術を行うことで乳腺腫瘍や子宮の病気のリスクを大きく下げられるという科学的なデータが多数存在しています。
さらに、避妊・去勢手術は、動物福祉の面からもとても重要な意味を持っています。望まれない命の誕生を防ぐことで殺処分の減少や地域猫活動の推進にもつながり、人と動物が共に安心して暮らせる社会づくりに貢献しています。
避妊・去勢手術の流れと準備
避妊・去勢手術は、日帰りまたは1泊入院で行われることが一般的です。
手術当日の朝に愛犬・愛猫をお預かりし、まずは健康チェックや血液検査を行って、全身麻酔に耐えられるかどうかの最終確認を行います。
手術そのものは、麻酔の導入も含めておよそ1時間程度で終了することが多く、日帰りの場合は夕方にお迎えとなります。
当日は、絶食・絶水の指示が出されるため、病院から案内された内容にしっかり従うことが大切です。
また、術後のケアに備えて、事前にエリザベスカラーの用意や清潔な寝床の準備をしておくと安心です。術後は安静が必要になるため、ゆっくり休める環境を整えてあげましょう。
手術後のケアと注意点
避妊・去勢手術のあとは、順調な回復のためにご自宅でのケアがとても重要です。
術後1〜2日は体力が落ちやすく、愛犬・愛猫も不安定な状態になりやすいため、静かで落ち着いた環境で安静に過ごせるように配慮してあげましょう。
活発な犬や猫であっても、術後1週間ほどはジャンプや走り回るような動きは控えるのが望ましいとされています。ケージや囲いを活用して、無理なく過ごせる空間を整えてあげてください。
食事については、手術当日や翌日は食欲が落ちることもあります。無理に食べさせる必要はありませんが、徐々に普段通りに食べられるようであれば心配いりません。ただし、吐き気や元気の低下、極端な食欲不振が続く場合は、すぐに動物病院にご相談ください。
傷口のケアも大切です。抜糸が必要なタイプの手術であれば、通常は1〜2週間後に再診を行い、傷の状態を確認しながら処置を行います。
傷口をなめたり噛んだりしてしまうと、感染や傷の開きにつながる可能性があるため、術後すぐからのエリザベスカラーの着用が推奨されます。
最近では、軽量な布製カラーや術後服といった代替アイテムもありますので、性格や体格に合わせて使いやすいものを選んであげるとよいでしょう。
また、手術後は代謝が落ち、太りやすくなる傾向があります。術前と同じ食事量を続けていると、知らないうちに体重が増えてしまうことも少なくありません。
術後は、獣医師と相談しながら食事内容を見直し、カロリー管理を行うことが大切です。安静期間が終わったら、無理のない範囲でお散歩や遊びを取り入れ、少しずつ体を動かしていきましょう。
避妊・去勢手術に関するよくある質問
Q:手術に適した年齢はいつですか?
A: 一般的には、生後6か月前後が目安とされています。ただし、犬や猫の体格や成長スピード、これまでの病歴によって適切な時期は異なるため、かかりつけの獣医師とご相談のうえで判断することが大切です。
Q:手術にはどんなリスクがありますか?
A: 全身麻酔を使用するため、ごくまれに麻酔によるリスクが生じる可能性があります。ただし、術前には健康チェックや血液検査を行い、安全に手術ができる状態かをしっかり確認しています。避妊・去勢手術は、比較的短時間で終わる安全性の高い手術です。
Q:麻酔は安全ですか?
A: 近年は麻酔に関する技術やモニタリング機器が進歩しており、以前に比べて安全性は向上しています。
当院でも、手術中は生体モニターで心拍や呼吸などを継続的にチェックし、万全の体制で管理を行っています。
ただし、どんな処置にも少なからずリスクは伴うため、事前に健康状態をしっかり把握したうえで、適切な麻酔方法を選択しています。
Q:術後の生活に変化はありますか?
A: 発情による行動(鳴く、ソワソワする、攻撃的になるなど)が軽減され、落ち着いた性格になる犬や猫もいます。基本的には、日常生活に大きな影響はありませんのでご安心ください。
Q:エリザベスカラーは必要ですか?
A: ほとんどの場合で必要となりますが、最近では「術後服(エリザベスウェア)」という代替品もあります。どちらを選ぶ場合でも、傷口をなめさせないことが重要ですので、性格や体格に合った方法を選びましょう。
Q:術後の体重管理が心配です。
A: 避妊・去勢後は代謝がやや落ちる傾向があるため、食事量や内容の見直しが必要です。低カロリーのフードに切り替えたり、無理のない範囲で運動を取り入れたりすることで、健康的な体重を維持することができます。心配な場合は、体重管理についてもお気軽にご相談ください。
まとめ
避妊・去勢手術は、愛犬・愛猫の健康を守るための大切な医療行為です。
単に繁殖を防ぐだけでなく、将来的な病気の予防や性ホルモンによる行動トラブルの軽減につながり、さらには地域全体の動物福祉にも貢献するという、大きな意味を持つ手術です。
術後のケアや生活の見直しも含めて、愛犬・愛猫がこれからも健やかに、穏やかに過ごしていけるよう、私たち獣医師も精一杯サポートいたします。
避妊・去勢手術について気になることやご不安な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
北海道札幌市の「アイリス動物医療センター」