がんの進行度別に考える犬猫の治療法|腫瘍認定医がいる札幌の動物病院が解説

犬や猫にとって、がんは今や珍しい病気ではありません。
近年は寿命の延びとともに、獣医療の進歩によって発見の機会も増え、がんと向き合う飼い主様は年々増加しています。
こうした中で大切なのは、がんと診断されたその時点で、治療方針をどう立てていくかを早い段階で明確にすることです。
腫瘍に関する専門的な知識と豊富な経験を持つ獣医師が在籍する動物病院では、がんの種類や進行度に応じて、犬や猫それぞれの状態に合わせた個別の治療方針を立てることができます。
そこで今回は、がんのステージごとに考慮すべきポイントや、後悔のない選択をするために知っておきたい治療の考え方について、札幌に在籍する腫瘍認定医がわかりやすくご説明いたします。
■目次
1.犬や猫のがんで見られる変化とは
2.がんの進行度はどう決まる?|ステージ分類と治療を考える基準
3.進行度別に見る治療の選択肢
4.その動物に合った治療を選ぶには?|腫瘍専門医が考えるオーダーメイド医療
5.当院での診療体制|専門医が在籍する動物病院の強みとは
6.まとめ|がんと向き合うために必要なこと
犬や猫のがんで見られる変化とは
がんの兆候は、初めのうちはとても小さく、見た目や行動の変化がわかりにくいことが多いのが特徴です。
しかし、以下のような変化が見られた場合は、がんの可能性も視野に入れて検査を受けることが勧められます。
・しこりが触れる(特に大きさが徐々に変化している)
・食欲が落ちてきた、以前より食べる量が減った
・急に体重が減ってきた
・元気がなく、動きが鈍くなった
・口臭が強くなった、口や鼻から出血が見られる
・咳をする、呼吸が荒くなった など
もちろん、これらの症状はすべてがん特有のものではなく、他の病気によって引き起こされる場合もあります。
それでも、がんを含めたさまざまな病気において、早期発見・早期治療が最も重要であることに変わりはありません。
がんの進行度はどう決まる?|ステージ分類と治療を考える基準
がんの治療方針を考えるうえで、まず確認すべきなのが「ステージ(病期)」の把握です。
多くのがんは、進行度に応じて以下の4つの段階に分類されます。
<ステージ1>
腫瘍が小さく、発生部位に限局している
<ステージ2>
腫瘍がやや大きくなっているが、まだ局所にとどまっている
<ステージ3>
周囲のリンパ節などに転移が見られる
<ステージ4>
肺・肝臓・骨など、遠隔の臓器に転移が確認される
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、腫瘍の種類(例:リンパ腫・乳腺腫瘍・口腔内腫瘍など)や、犬か猫かといった動物種によっても、分類方法や重症度の評価は異なる場合があります。
治療の選択肢を検討する際には、腫瘍の状態だけでなく、犬や猫がどのように日々を過ごしていけるか、そして飼い主様がどのような暮らしを望まれるかといった生活の質(QOL)を尊重する視点も欠かせません。
そのためにも、腫瘍認定医のような専門的な知識と経験を持つ獣医師と一緒に、納得のいく選択肢を一つひとつ丁寧に検討していくことがとても大切です。
進行度別に見る治療の選択肢
<ステージ1・2(早期)>
がんが初期の段階で見つかった場合、多くのケースで外科的な切除によって根治が期待できます。
特に、腫瘍が皮膚や乳腺など体の表面に近い場所にある場合は、病変の範囲が明確であれば手術によって完全に取り除けることも少なくありません。
ただし、手術が成功しても、目に見えない微小転移が体内に残っている可能性があります。
そのため、再発や転移のリスクを下げる目的で、術後に抗がん剤や分子標的治療を併用するケースもあります。
当院では、治療の目的や副作用について丁寧にご説明し、飼い主様と一緒にその動物の状態に合った最適な治療方針を検討しています。
<ステージ3(局所進行)>
この段階では、腫瘍が周囲の組織やリンパ節にまで広がっている状態です。
腫瘍の完全な切除が難しい場合もありますが、手術に加えて抗がん剤や放射線療法といった内科的治療を併用することで、腫瘍の縮小や進行の抑制が期待できます。
このステージでは、がんへの直接的な治療効果だけでなく、副作用が日常生活に与える影響にも配慮した治療設計が重要です。
当院では、副作用のモニタリングや緩和処置を並行して行いながら、犬や猫ができるだけ穏やかに過ごせるよう、QOL(生活の質)を重視したサポートを行っています。
<ステージ4(遠隔転移・末期)>
がんが肺・肝臓・骨など、体の他の部位に転移している状態で、治療の目的は「がんを治すこと」から「苦痛を和らげ、穏やかな生活を支えること」へと変わります。
この段階では「緩和ケア(パリアティブケア)」が中心となります。
緩和ケアでは、痛みや呼吸困難、食欲不振などの症状を和らげることを重視し、点滴や疼痛管理、在宅でのケアなどを組み合わせて対応します。
飼い主様の「そばにいてあげたい」「できるだけ苦しまないようにしてあげたい」といった思いに寄り添いながら、愛犬や愛猫にとって最も自然なかたちで過ごせるよう、一緒に選択肢を考えていきます。
その動物に合った治療を選ぶには?|腫瘍専門医が考えるオーダーメイド医療
「がん」と聞くと、まず「抗がん剤治療」を思い浮かべる飼い主様も多いかもしれません。
しかし実際には、「がん=抗がん剤」というわけではなく、治療にはさまざまな選択肢があり、何よりも大切なのは、愛犬や愛猫に合った方法を選ぶことです。
例えば、活発な性格で通院に強いストレスを感じやすい犬や猫には、在宅での内服薬を中心にした治療設計が検討されます。
一方、通院に慣れていて検査や点滴に対応できる場合は、より積極的な治療を組み合わせていくことも可能です。
また、年齢や持病の有無、生活環境、そして飼い主様のご希望も、治療方針を考えるうえで欠かせません。
腫瘍専門医は、がんの種類や進行度だけでなく、犬や猫それぞれの状態とご家族の状況を総合的に判断し、「その子だけの治療方針=オーダーメイドの医療」をご提案できる存在です。
当院での診療体制|専門医が在籍する動物病院の強みとは
当院には、腫瘍認定医の資格を持つ獣医師が在籍しており、がんに関する専門的な診療を行っています。
腫瘍の種類や進行度を正確に判断するため、CT・超音波・レントゲンなどの画像診断機器を駆使し、必要に応じて病理検査や細胞診も行っています。
また、当院の大きな特徴は、複数の専門分野が連携する「チーム医療体制」です。
腫瘍科を中心に、内科・外科・麻酔科・看護スタッフなどが密に連携し、それぞれの専門性を活かし、総合的に診療を行っています。
検査から診断、治療、緩和ケア、さらには在宅でのフォローアップに至るまで、飼い主様と二人三脚で一歩ずつ歩んでいく姿勢を大切にしています。
まとめ|がんと向き合うために必要なこと
犬や猫の「がん治療」と聞いて、不安や戸惑いを感じる飼い主様は少なくありません。
「苦しませたくない」「もう高齢だから難しいのでは」「何が正しいのかわからない」
そう感じたときこそ、どうぞ当院にご相談ください。
私たちが目指しているのは、「治すこと」だけを目的とする医療ではなく、愛犬や愛猫とご家族が納得しながら日々を過ごせる時間を支える医療です。
がんのステージや種類によって治療の選択肢は変わりますが、「何もできない」ということは決してありません。
札幌で犬や猫のがん治療を検討されている飼い主様は、腫瘍認定医による確かな診断と、専門スタッフによるあたたかいサポート体制を整えている当院へ、ぜひお気軽にご相談ください。
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