犬が足を浮かせて歩く原因は?|小型犬に多いパテラの症状と注意点-アイリス動物医療センター|札幌市白石区の動物病院
NEW

犬が足を浮かせて歩く原因は?|小型犬に多いパテラの症状と注意点

犬が足を浮かせて歩く原因は?|小型犬に多いパテラの症状と注意点

「最近、うちの子が片足を浮かせて歩くことが増えた気がする…」「ジャンプや走るのを嫌がるけど、これって歳のせい?」といったお悩みを抱える飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

 

こうした症状の背後には、特に小型犬でよく見られるパテラ(膝蓋骨脱臼)が隠れている可能性があります。

 

パテラは初期段階では気づきにくいことが多いのですが、進行すると愛犬の生活に大きな影響を与えることがあります。例えば、痛みが増して歩きにくくなったり、普段何気なくしていた動作が難しくなったりすることもあるのです。

 

こうした状態を防ぐためには、早めに異変に気づき、適切な治療を行うことが何より大切です。

 

今回は、パテラとはどのような疾患なのか、具体的な症状や飼い主様が早めに気づくためのポイントについて詳しくご紹介していきます。

 

■目次
1.パテラ(膝蓋骨脱臼)とは?
2.パテラのグレード(重症度)
3.パテラの症状と気づきのポイント
4.診断方法
5.治療方法
6.リハビリテーションの重要性
7.日常生活での注意点と予防法
8.まとめ

 

 

パテラ(膝蓋骨脱臼)とは?


膝蓋骨(パテラ)は、膝関節の前面にある小さな骨で、人間でいう「膝のお皿」にあたります。この骨は、大腿骨にある溝(大腿骨滑車)にぴったりと収まり、膝の屈伸をスムーズにする大切な役割を果たしています。

 

しかし、何らかの理由で膝蓋骨がこの溝から外れてしまうと、「膝蓋骨脱臼」と呼ばれる状態になります。

 

膝蓋骨が脱臼すると膝の安定性が損なわれ、歩行や運動が難しくなります。さらに、この状態を繰り返すと、周囲の軟骨や靭帯が傷つき、関節炎や慢性的な痛みにつながる恐れがあります。

 

<発症しやすい犬種や年齢>

パテラは特に小型犬に多く見られる疾患です。以下の犬種は、特に膝蓋骨脱臼を発症しやすいとされています。

 

・トイプードル

・チワワ

・ヨークシャーテリア

・ポメラニアン

・マルチーズ

 

この疾患は、若い頃に初めて症状が現れることが多いですが、成犬やシニア犬になってから発症するケースも少なくありません。年齢にかかわらず注意が必要な疾患といえます。

 

 

パテラのグレード(重症度)


膝蓋骨脱臼は、その重症度に応じて4つのグレードに分類されます。それぞれのグレードごとに症状や対処法が異なるため、愛犬の状態を正しく把握することが大切です。

 

<グレード1>

膝蓋骨は基本的に正常な位置にありますが、手で押すと簡単に脱臼する状態です。手を離すと膝蓋骨は自然に元の位置に戻ります。

 

この段階では、目立った症状がほとんどなく、犬が痛みを感じることも少ないため、気づきにくい場合があります。

 

<グレード2>

膝蓋骨が不安定で、日常の動作の中で脱臼と元の位置に戻ることを繰り返す状態です。脱臼している間に痛みが生じることがあり、犬がスキップするような歩き方をしたり、突然「キャン」と鳴いたりすることがあります。

 

ただし、手で押すと簡単に正常な位置に戻せます。

日常生活に大きな支障はありませんが、脱臼を繰り返すことで症状が進行する可能性があるため注意が必要です。

 

<グレード3>

膝蓋骨が常に脱臼している状態ですが、手で押せば一時的に正常な位置に戻すことができます。しかし、すぐにまた脱臼してしまいます。

 

この段階では、後ろ足を引きずるように歩く、またはケンケンするような歩き方が見られるようになります。脱臼による痛みや違和感が続くため、犬にとって大きな負担となります。

 

<グレード4>

膝蓋骨が完全に脱臼した状態で固定されているため、手で押しても正常な位置に戻すことができません。この段階では、大腿骨や脛骨の変形が進行し、犬が後ろ足を伸ばすことも難しくなります。痛みや関節の不自由さが顕著になり、犬の生活の質に大きな影響を及ぼします。

 

 

パテラの症状と気づきのポイント


パテラが進行すると、以下のような症状が見られることがあります。

 

・足を上げて歩く

歩行中に片足を浮かせたり、数歩ピョンピョンと跳ねたりする動作が目立つようになります。

 

・運動を嫌がる

ジャンプや階段の上り下りをためらうようになります。

 

・膝を舐める

膝に痛みや違和感があるため、頻繁に舐める行動が見られることがあります。

 

このような仕草はサインの一つとして見逃さないようにしましょう。

 

<症状の進行度合いによる違い>

・初期(グレード1~2)

症状は断続的で、犬が痛みを感じていないことも多い段階です。

この時期は日常生活にほとんど支障がありませんが、注意深く観察することが大切です。

 

・中期(グレード2~3)

脱臼が頻繁になり、歩き方に明らかな異常が見られることがあります。

この段階では軽い痛みを伴う場合があり、犬の様子に変化が出ることが多いです。

 

・重症(グレード4)

膝関節が変形し、歩行が困難になります。慢性的な痛みが続き、犬の生活の質が大きく低下します。

 

<獣医師に相談するタイミング>

犬の健康を守るためには、早めに異変に気づき、適切なタイミングで獣医師に相談することが大切です。

 

・こんなサインが見られたらすぐ相談を

足を上げて歩く動作や運動を嫌がるなどの動作が1回でも見られた場合は、早めに獣医師に相談しましょう。

早期に診断を受けることで、症状の進行を防ぎ、愛犬の健康を守ることができます。

 

・無症状でも定期的にチェックを

たとえ目立った症状が見られなくても、小型犬を飼っている場合は定期健診で膝の状態を確認してもらうことをおすすめします。

 

 

診断方法


膝蓋骨脱臼の診断には、以下のような検査が行われます。

 

・触診

獣医師が手で膝を動かし、膝蓋骨が正常な位置にあるか、またどれくらい外れやすいかを確認します。触診は、グレードの初期判断や膝の安定性を確認するための重要な検査です。

 

・レントゲン検査

膝関節の状態や骨の変形、関節炎の有無を詳しく調べるために行われます。特にグレード2以上が疑われる場合、治療方針を決める際に欠かせない検査です。

 

・CT検査

骨や関節の構造をさらに詳しく確認する必要がある場合に行われます。特に手術を検討する際に、詳細な画像診断が必要となることがあります。

 

症状が出始めた時期や頻度、そして日常生活での様子を獣医師に詳しく伝えることが、より正確な診断につながります。愛犬の行動や変化に気づいたら、メモを取るなどして受診時に伝える準備をしておくとよいでしょう。

 

 

治療方法


<保存療法(主にグレード1~2)>

軽度のケースでは、手術を行わず、以下のような保存的な治療が選択されることが一般的です。

 

・体重管理

膝関節への負担を減らすため、適正体重を維持します。肥満は症状を悪化させる原因になるため、食事管理が重要です。

 

・サプリメント

脂肪酸を含むサプリメントが、関節の健康維持に役立つ場合があります。

 

・運動制限

激しい運動やジャンプを避け、膝への負担を軽減します。

 

・理学療法

軽いマッサージやストレッチで筋肉を柔軟に保ち、膝の安定性をサポートします。

 

<手術療法(主にグレード3~4、または症状が進行する場合)>

症状が進行し、保存療法では改善が見られない場合には、手術が必要となることがあります。

 

・溝を深くする手術(滑車溝形成術)

大腿骨の溝を深くして、膝蓋骨が外れにくくします。

 

・骨の位置を調整する手術

大腿骨や脛骨を適切な位置に移動させることで、膝の安定性を確保します。

 

手術後の回復には約1〜2ヶ月ほどの期間が必要です。この間、運動を制限し、安静に過ごすことが求められます。

術後のケアが治療の成功に直結するため、獣医師の指示に従い、慎重に管理してください。

 

 

リハビリテーションの重要性


手術後や保存療法の一環としてリハビリを行うことで、筋力を回復させ、関節の可動域を改善できます。リハビリは愛犬の回復を早めるだけでなく、再発を防ぐためにも非常に重要です。

 

・軽い散歩

術後数週間が経過した後、獣医師の指示に従い、短時間の散歩を開始します。

 

・水中療法

水中トレッドミルやプールでの運動は、関節への負担を減らしながら筋力を鍛える効果があります。

 

・ストレッチやマッサージ

自宅でできるケアとして、優しく筋肉をほぐすストレッチやマッサージを取り入れるとよいでしょう。

 

 

日常生活での注意点と予防法


膝蓋骨脱臼の予防や進行を防ぐためには、日常生活での工夫が重要です。特に膝への負担を軽減しつつ、筋力を維持することを心掛けましょう。

 

<適度な運動を取り入れる>

膝関節に負担をかけない範囲で、以下のような運動を心掛けましょう。

 

・短時間の散歩

地面が柔らかい場所(芝生や砂地)を選び、長時間の散歩は避けます。

 

・ジャンプを控える

高い場所からのジャンプや無理な運動は膝に大きな負担をかけます。これらはできるだけ避けるようにしましょう。

 

・遊び方の工夫

追いかけっこやフリスビーなどの激しい運動は控え、ボール遊びや軽いトレーニングなど、関節に優しい遊びを取り入れましょう。

 

<体重管理>

体重管理は、膝蓋骨脱臼の予防と進行を抑えるために不可欠です。適正体重を維持することで、膝への負担を減らすことができます。

 

・適正体重の把握

獣医師に相談し、愛犬の犬種や体型に合った理想的な体重を確認しましょう。

 

・バランスの取れた食事

高品質なドッグフードを適量与え、過剰なおやつは控えます。おやつは1日のカロリーの20%以下に抑えることが理想的です。

 

・定期的な体重チェック

毎月1回体重を測り、増減があれば早めに対策を取りましょう。

 

膝に優しい生活環境を整える

愛犬の膝に負担をかけない環境作りは、症状の予防や進行抑制に効果的です。

 

・階段の使用を制限

階段の上り下りは膝への負担が大きいため、柵を設置して利用を制限しましょう。

 

・滑りにくい床材の使用

フローリングなど滑りやすい床は、膝関節に余計な負担をかけます。滑り止めマットを敷くことで転倒を防ぎましょう。

 

・高い場所へのアクセスを防ぐ

ソファやベッドなどの高い場所にはジャンプさせないよう、スロープやペット用階段を設置します。

 

・快適な寝床

関節をサポートするクッション性の高いベッドを用意して、愛犬がリラックスできる寝床を整えましょう。

 

 

まとめ


膝蓋骨脱臼(パテラ)は、日常生活での工夫次第でリスクを大幅に軽減することができます。特に、適度な運動と体重管理を意識し、膝関節に負担をかけない環境を整えることが大切です。

 

また、階段の使用を制限したり、滑り止めマットを活用するなど、生活環境の改善も効果的です。もしも異常を感じた場合は、早めに動物病院に相談し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

 

 

■関連する病気はこちらで解説しています。

愛犬・愛猫の足腰の痛みに要注意!|獣医が解説する整形外科疾患と治療法

 

 

北海道札幌市の「アイリス動物医療センター」

011-876-8683

 

診療案内はこちら

WEB予約はこちら