愛犬の毛が抜ける理由とは?|ホルモン異常からアレルギーまで原因別に解説

愛犬の毛が突然抜け始めたり、皮膚の状態に異変を感じたりすると、飼い主様としてはとても心配になりますよね。「これって病気なの?それとも自然なことなの?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
犬の脱毛症は、アレルギーやホルモン異常、寄生虫など、さまざまな原因で引き起こされる可能性があります。原因によって治療方法も異なるため、早期の発見と適切な対応がとても大切です。
今回は、犬の脱毛症について原因や症状、受診のタイミングをわかりやすく解説します。
■目次
1.犬の脱毛症の主な原因
2.よくある症状と特徴
3.動物病院を受診するタイミング
4.動物病院での検査と診断
5.治療方法
6.対策
7.当院の事例
8.まとめ
犬の脱毛症の主な原因
犬の脱毛症はさまざまな要因によって引き起こされます。それぞれの特徴を理解することで、適切な対応が可能になります。
■アレルギー
・食物アレルギー:特定の食材に対する過敏反応が原因で、全身にかゆみや赤みを伴う脱毛が見られます。
・環境アレルギー:ダニ、花粉、カビなどの環境要因によって引き起こされることがあります。季節によって症状が悪化する場合もあります。
■ホルモン異常
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などでは、毛が薄くなるだけでなく、毛艶が悪くなったり、皮膚が乾燥したりといった症状が現れることがあります。
■寄生虫
・ノミやダニ:ノミの寄生により激しいかゆみが生じ、部分的な脱毛が進行します。
・疥癬(ヒゼンダニ感染症):強いかゆみを伴い、広範囲にわたって脱毛が進行します。
■犬種や年齢
・犬種の特徴:小型犬(チワワやプードルなど)や柴犬は、アレルギー性やアトピー性の脱毛が多く見られます。ポメラニアンでは原因不明の脱毛症が発生することもあります。
・年齢の影響:高齢犬では、甲状腺機能低下症やホルモン性脱毛症が増加する傾向があります。
よくある症状と特徴
犬の脱毛症にはさまざまな症状があり、そのパターンや皮膚の状態を観察することで原因の特定につながることがあります。
<脱毛のパターン>
・部分的な脱毛
特定の部位だけが抜ける場合は、寄生虫やアレルギーが原因として考えられます。
・全身性の脱毛
全体的に毛が薄くなる場合は、ホルモン異常や栄養不足が関係していることが多いです。
<併発する症状>
・かゆみの有無
かゆみを伴う場合は、アレルギーや寄生虫が原因である可能性が高いです。
一方、かゆみがない場合はホルモン異常が原因の可能性があります。
・皮膚の状態
赤み、膿、フケなどの症状が見られる場合は、感染症や炎症が進行していることが考えられます。皮膚の変化も注意深く観察しましょう。
<季節性と病的な脱毛の見分け方>
・季節性の脱毛
春や秋に見られる換毛期は正常な脱毛の一種です。ただし、毛がまだらに抜けている、皮膚に炎症が見られる場合は注意が必要です。
・病的な脱毛
短期間で広範囲に毛が抜ける場合や、毛の再生がほとんど見られない場合は病的な脱毛の可能性があります。
動物病院を受診するタイミング
愛犬の脱毛症状が見られた場合、症状の進行具合や併発する症状に応じて、動物病院を受診するタイミングを見極めることが大切です。
以下のような症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
・脱毛が急速に進行
数日から数週間の間に広範囲で毛が抜ける場合は、感染症や寄生虫が原因の可能性があります。
・かゆみを伴う場合
激しいかゆみが続く場合は、ノミやダニ、アレルギー性皮膚炎などが疑われます。
・皮膚の異常
赤みや膿、潰瘍、フケが広がる場合は、炎症や感染が進行している可能性があるため注意が必要です。
<経過観察が可能な症状>
経過観察が可能な症状としては、季節性の換毛期に見られる自然な脱毛や、軽度のかゆみなどがあります。
これらは環境や生活習慣を整えることで改善することが多く、皮膚に炎症がない場合は、まず生活環境を見直しながら様子を見ても良いでしょう。
<放置することによるリスク>
一方で、脱毛症を放置すると症状が進行して慢性的な皮膚疾患に発展する恐れがあります。特に、感染症や炎症が広がると治療が難しくなるだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、こうした状態が続くと愛犬の生活の質が低下し、不快感やストレスが増えることで、他の健康問題を引き起こすことも考えられます。
動物病院での検査と診断
愛犬の脱毛の原因を特定するためには、さまざまな検査が必要です。一般的な検査内容から、具体的なアレルギー検査やホルモン検査の必要性、診断の流れについてご紹介します。
<一般的な検査内容>
・皮膚検査
掻爬検査(皮膚を軽く削り、皮膚片を顕微鏡で確認する)やテープ検査を行い、ノミやダニ、細菌、真菌の有無、毛の状態などを確認します。
・血液検査
ホルモン異常や全身性疾患の兆候を調べるために実施されます。脱毛以外の健康状態も確認できるため、重要な検査です。
<アレルギー検査やホルモン検査>
・アレルギー検査
食物や環境要因(ダニ、花粉、カビなど)に対する免疫反応を特定するために行います。
・ホルモン検査
甲状腺機能低下症やクッシング症候群など、ホルモン異常が原因と考えられる場合に必要な検査です。
これらの検査結果をもとに、脱毛の原因を詳しく特定していきます。必要に応じて、複数の検査を組み合わせながら診断を進め、最適な治療方法を決定します。
治療方法
脱毛症の治療には、原因に合わせた適切な対応が欠かせません。また、生活環境の見直しや日常的なケアも、愛犬の健康を守るうえで重要です。
<原因に応じた治療法>
・投薬治療
抗生物質、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬などが処方され、感染症やアレルギーの症状を和らげます。
・シャンプー療法
薬用シャンプーを使用して皮膚の汚れを落とし、かゆみや炎症を抑えます。
・ホルモン療法
ホルモン異常が原因の場合は、甲状腺ホルモンやステロイドを用いた治療が行われます。
対策
<生活環境の改善と食事管理>
・生活環境の見直し
部屋の掃除や湿度管理を徹底し、アレルゲンや寄生虫の繁殖を防ぎます。
・食事管理
アレルギー対応の療法食を取り入れ、栄養バランスを整えることで皮膚の健康をサポートします。
<季節による対策>
・夏季:高温多湿の環境では、寄生虫や感染症が増えるため、適切な予防や清潔な環境作りが必要です。
・冬季:乾燥による皮膚のかゆみやフケが増える季節には、保湿ケアを心がけましょう。
<飼い主様ができること、獣医師に任せるべきこと>
・飼い主様ができること
日常的な観察、食事や環境の管理、薬用シャンプーの使用などを実践しましょう。
・獣医師に任せるべきこと
正確な診断、薬の処方、症状が進行している場合の治療方針の決定や、投薬の中止時期の判断などは、獣医師にお任せください。
当院の事例
脱毛症は、根気強くケアを続けることで改善が見込める場合があります。
例えば、アロペシアXと診断されたポメラニアンが、投薬やシャンプー療法を継続した結果、脱毛が改善されたケースもあります。
定期的な診察と治療を続けることで、難治性の疾患でも良い結果が得られることがあります。
まとめ
犬の脱毛症は、多くの場合、適切な治療やケアを行うことで改善が期待できます。
脱毛が進行している、かゆみが強い、皮膚に赤みやフケなどの異常が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
治療後も、生活環境の見直しや食事管理を続けることで、再発を防ぎ、愛犬の健康を維持することができます。日頃のケアをしっかりと行い、愛犬が快適に過ごせる毎日を目指しましょう。不安なことがあれば、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
北海道札幌市の「アイリス動物医療センター」