腎臓病は早期発見が鍵!|犬と猫の多飲多尿に隠れる病気のサイン

愛犬や愛猫が年齢を重ねるにつれ、「最近、水をたくさん飲むようになった」「体重が減ってきたかもしれない」といった変化に気づくことはありませんか?
こうした症状は、特に高齢の犬や猫に多い腎臓病の初期サインである可能性があります。
腎臓病は、早期発見と適切な治療・管理によって進行を遅らせることができます。これにより、愛犬や愛猫がより快適で充実した生活を送れるようサポートできます。
今回は、腎臓病の仕組みや初期症状、日常生活での管理と注意点をわかりやすく解説します。
■目次
1.犬と猫の腎臓病とは?
2.犬と猫における腎臓病の違い
3.腎臓病の初期症状と発見のポイント
4.犬と猫における症状の違い
5.診断方法
6.腎臓病のステージ別の特徴
7.治療方法
8.日常生活での管理と注意点
9.まとめ
犬と猫の腎臓病とは?
腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物を尿として排出する重要な臓器です。また、水分や電解質のバランスを保つ役割も担っています。
しかし、腎臓が十分に機能しなくなると体内に毒素が蓄積し、さまざまな健康問題を引き起こします。この状態を腎臓病といいます。
腎臓病には、急性腎臓病と慢性腎臓病の2種類があり、それぞれ特徴や原因が異なります。
<急性腎臓病>
急性腎臓病は、短期間で腎臓の機能が急激に低下する状態です。以下のような原因で発症することがあります。
・毒物の摂取(抗凍結剤など)
・レプトスピラ感染症などの感染症
・尿路結石症
・心臓病 など
急性腎臓病は、早期に適切な治療を行えば回復する可能性が高いとされています。そのため、早期発見と迅速な治療が重要です。
<慢性腎臓病>
慢性腎臓病は、腎機能が徐々に低下していく進行性の疾患です。特に高齢の犬や猫に多く見られます。
一度進行すると、元の腎機能を取り戻すことは難しいため、早期発見と適切な進行管理が不可欠です。
犬と猫における腎臓病の違い
<犬の場合>
腎臓病は高齢の犬で発症するリスクが高い傾向にあります。定期的な健康診断で早期発見を目指しましょう。
<猫の場合>
猫では腎臓病が特に一般的で、15歳以上の猫の70〜80%が慢性腎臓病を抱えているとされています。また、ストルバイト結石や尿路疾患が腎臓病の引き金になることもあります。
腎臓病の初期症状と発見のポイント
腎臓病は、初期段階ではわずかなサインしか現れないことが多く、見逃されやすい疾患です。以下の症状を注意深く観察し、早期発見につなげましょう。
・多飲多尿:腎機能が低下すると、水をたくさん飲み、大量の尿を出すようになります。
・食欲不振:食事に興味を示さなくなることが増え、食べる量が減ってきます。
・体重減少:栄養吸収が悪化するため、徐々に体重が減少します。
・被毛の質の低下:毛がぱさつき、艶がなくなることがあります。
・口臭:体内に蓄積した毒素が原因で、アンモニア臭のような口臭が出ることがあります。
・嘔吐や下痢:消化器系の症状として嘔吐や下痢が見られることがあります。
犬と猫における症状の違い
<犬の場合>
活動的だった犬が急に疲れやすくなる、散歩を嫌がるなどの行動の変化が見られることがあります。また、嘔吐や下痢が初期症状として現れる場合もあります。
ただし、犬の腎臓病の初期症状は目立たないことが多く、気づくのが難しい場合があります。
<猫の場合>
猫は腎臓病の症状が犬よりもさらにわかりにくいことが特徴です。食欲不振や体重減少が唯一のサインとなることも少なくありません。そのため、猫の健康状態を日々注意深く観察することが特に重要です。
腎臓病の初期症状は進行が緩やかなため、「少し元気がない」「水を飲む量が増えた気がする」などの小さな変化も見逃されがちです。しかし、これらは病気のサインである可能性があります。
普段から注意深く観察し、定期的に健康診断を受けることで、腎臓の機能をチェックすることが何よりも大切です。
診断方法
腎臓病の診断には、以下の検査が行われます。早期発見のためにも、これらの検査を定期的に受けることが大切です。
・血液検査
血液検査では、腎臓の状態を評価するためにクレアチニンや尿素窒素(BUN)の値を測定します。これらの数値が上昇している場合、腎機能が低下している可能性があります。
また、SDMAは早期の腎臓病を発見するために特に有用な指標です。
・尿検査
尿検査では、尿比重や尿蛋白の測定を行い、腎臓がどれだけ水分をろ過しているかを確認します。尿中のたんぱく質が多い場合や尿比重が低い場合、腎機能の低下が疑われます。
・画像診断
超音波検査やX線検査では、腎臓の形状やサイズ、結石の有無を確認します。腎臓が縮んでいる、または腫れている場合、腎臓に何らかの問題がある可能性があります。
◆定期検査の重要性
腎臓病は進行性の疾患であり、早期に発見して対処することが治療成功の鍵となります。特に高齢の犬や猫では、6ヶ月ごとの定期検査が推奨されています。腎臓病の兆候がある場合には、さらに短い間隔で検査を行うことが理想的です。
ただし、適切な検査間隔は個々の状況によって異なります。愛犬や愛猫に合った検査頻度については、かかりつけの獣医師に相談して確認するようにしましょう。
腎臓病のステージ別の特徴
腎臓病は、国際腎臓研究学会(IRIS)の基準に基づき、以下の4段階に分類されます。それぞれのステージに応じた適切な対応が重要です。
<ステージ1(早期)>
血液検査で軽度の変化が見られるものの、目立った症状はほとんど現れない段階です。この段階では、常に新鮮な水を飲める環境を整えることが大切です。また、腎臓への負担を軽減するために食事療法を始めることで、病気の進行を遅らせることが期待できます。
<ステージ2(軽度)>
クレアチニンやBUN、SDMA値が軽度に上昇し、食欲の低下や多飲多尿といった症状が見られる場合があります。
この段階では、食事療法に加え、軽度の投薬を組み合わせて腎臓の機能を管理することが重要です。
<ステージ3(中等度)>
クレアチニンやBUN、SDMA値が中程度まで上昇し、血液検査で明らかな異常が確認される段階です。この頃には、嘔吐や体重減少といった症状が顕著に現れることがあります。
食事療法に加え、点滴治療や対症療法が必要になる場合もあります。
<ステージ4(重度)>
クレアチニンやBUN、SDMA値が重度に上昇し、腎機能がほとんど失われている状態です。この段階では命に関わる深刻な状況であり、集中治療が必要です。
また、愛犬や愛猫の生活の質を最優先に考えたケアが求められます。
治療方法
腎臓病の治療では、投薬治療、点滴治療、食事療法といった方法が用いられます。それぞれの治療方法には目的や特徴があり、愛犬や愛猫の状態に合わせた適切なケアが重要です。
<投薬治療>
投薬治療は、腎機能を補助しながら症状を緩和することを目的としています。主に以下の薬が使用されます。
・ACE阻害薬:血圧を下げて、腎臓への負担を軽減します。
・利尿剤:体内の余分な水分を排出し、むくみを緩和します。
・リン吸着剤:腎機能低下に伴う高リン血症を改善します。
・制吐剤:嘔吐や食欲不振などの症状を緩和します。
<点滴治療>
腎臓病が進行すると、体内に毒素が蓄積しやすくなります。以下のような場合には点滴治療が行われます。
・脱水症状:腎臓病では尿量が増え、体が脱水状態になることがあります。
・毒素の排出が必要な場合:血液中の毒素濃度が高い場合、点滴を用いて毒素を希釈・排出します。
<食事療法の重要性とフード選び>
腎臓病の管理において、食事療法は治療の柱のひとつです。適切なフードを選ぶことで腎臓への負担を軽減し、病気の進行を遅らせる効果が期待できます。
・低リン・低たんぱく質フード:腎臓への負担を減らし、病気の進行を遅らせます。
・高エネルギー食:腎臓病の犬や猫は体重が減少しやすいため、少量でも十分なカロリーを摂取できる高エネルギー食が適しています。
・嗜好性の高いフード:腎臓病の犬や猫は食欲が低下しやすいため、嗜好性の高いフードを選ぶことも重要です。
ただし、塩分が多いものや人間の食事は腎臓に悪影響を与える可能性があるため、絶対に与えないようにしましょう。
食事療法で使用するフードの選定には専門的な知識が必要です。愛犬や愛猫の状態に合ったフードを見つけるために、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。
日常生活での管理と注意点
腎臓病の犬や猫にとって、日常生活での管理は症状の進行を抑え、生活の質を維持するためにとても重要です。
<食事管理>
腎臓病では、食事の内容だけでなく、与え方にも注意が必要です。
・与え方
一度に大量の食事を与えるのではなく、1日2~3回に分けて少量ずつ与えましょう。
・適切な量
獣医師の指導に基づき、愛犬や愛猫の体重や病状に応じた適量を守ることが大切です。
・フードの選び方
腎臓病用の療法食を基本とし、嗜好性が低い場合はウェットタイプや温めたフードを混ぜるなど工夫を加えましょう。
・おやつの注意
おやつは塩分やリンを含むものを避け、低リンのおやつや野菜(獣医師に確認済みのもの)を選ぶようにしてください。
< 水分補給>
腎臓病の犬や猫では、多飲多尿や脱水を防ぐため、十分な水分補給がとても重要です。以下の工夫で水分摂取をサポートしましょう。
・水の置き方
複数の場所に水を設置し、愛犬や愛猫がいつでもすぐに飲めるようにしておきましょう。
・工夫した水の与え方
水を人肌程度に温めたり、広く浅いボウルなど飲みやすい器に変えたりすることで、水を飲む量が増えることがあります。
・水分を含む食事
ウェットフードや、ドライフードを水やお湯でふやかして与えることで、食事からも水分を補えます。
<ストレス管理と運動量>
ストレスや無理な運動は、腎臓病の進行を早める可能性があります。そのため、穏やかな生活環境を整え、適度な運動を維持することが大切です。
◆ストレス管理
・静かで安心できる場所を確保し、突然の音や環境の変化を避けるようにしましょう。
・他のペットとの接触がストレスになる場合は、別々に過ごせる時間を作ることが効果的です。
・スキンシップや優しい声掛けを増やし、不安を和らげてあげることも大切です。
◆運動量の調整
・犬の場合
無理のない散歩を心がけ、長時間の散歩や激しい運動は避けましょう。短い距離でも適度に歩くことで、体調の維持に役立ちます。
・猫の場合
無理に遊ばせるのではなく、軽い遊びを取り入れるようにします。興味を引くおもちゃやボール、キャットタワーを活用し、負担をかけない範囲で楽しませてあげてください。
まとめ
腎臓病の管理では、適切な食事、水分補給、ストレス軽減、そして適度な運動が重要なポイントです。
腎臓病用の療法食を取り入れたり、水分補給を工夫したりすることで、腎臓への負担を軽減し、愛犬や愛猫が快適に過ごせる環境を整えましょう。
飼い主様のちょっとした気配りや日々の観察が、腎臓病の進行を遅らせ、愛犬や愛猫の生活の質を大きく向上させます。もし気になることがあれば、早めに動物病院に相談しましょう。
北海道札幌市の「アイリス動物医療センター」