愛犬・愛猫の腫瘍に気づいたら?|獣医が教える早期発見のコツと治療法- アイリス動物医療センター|札幌市白石区の動物病院

愛犬・愛猫の腫瘍に気づいたら?|獣医が教える早期発見のコツと治療法

愛犬・愛猫の腫瘍に気づいたら?|獣医が教える早期発見のコツと治療法

愛犬や愛猫の体に「しこり」や「腫れ」を見つけたら、不安になるのは当然ですよね。

 

「これは一体何だろう?悪性なのかな、それとも良性?」と、いろいろな疑問が頭をよぎるかもしれません。そんな時こそ、まずは落ち着いて対応することが大切です。

 

腫瘍は、良性と悪性がありますが、どちらにしても早期発見と治療が重要です。

特に悪性腫瘍の場合、早めに見つけて適切な治療を受けることで、愛犬や愛猫の命を守れる可能性が高まります。

 

今回は、腫瘍を早期に発見するためのポイントや、治療法について詳しく解説します。

 

■目次
1.犬と猫の腫瘍とは?|知っておきたい基礎知識
2.愛犬や愛猫の腫瘍に気づくためのチェックポイント
3.腫瘍が見つかったらどうする?|知っておきたい初期対応
4.腫瘍診断の流れ|動物病院で行う検査とは?
5.腫瘍治療の選択肢|手術・化学療法・放射線治療について詳しく解説
6.当院の事例
7.まとめ

 

 

犬と猫の腫瘍とは?|知っておきたい基礎知識


 

<そもそも腫瘍とは?>

腫瘍とは、簡単に言えば、体内で異常に増殖した細胞が集まった塊のことを指します。腫瘍には良性悪性の2種類があり、それぞれ性質が大きく異なります。

 

まず、良性腫瘍についてですが、これは他の組織に浸潤せず、ゆっくりと成長するため、命に関わることが少ないです。通常、外科的に腫瘍を取り除くだけで治療が完了するケースが多く、比較的安心できるものです。

 

一方で、悪性腫瘍、いわゆるがんは注意が必要です。この腫瘍は周囲の組織に浸潤し、さらに血液やリンパを通じて他の臓器に転移する可能性があります。そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。治療が遅れてしまうと、命に関わることがあるため、日頃から注意深く観察し、少しでも異変を感じたらすぐに獣医師に相談することが大切です。

 

 

<犬猫に多い腫瘍の種類>

・皮膚腫瘍

犬や猫に最も多く見られる腫瘍の一つが、皮膚にできる腫瘍です。

 

代表的なものには、脂肪腫(良性)、肥満細胞腫(悪性)、そしてリンパ腫(悪性)などがあります。

 

脂肪腫は柔らかく、比較的ゆっくりと成長するため、命に直結するリスクは低いです。一方で、肥満細胞腫は急速に大きくなり、周囲の組織にも悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

 

・乳腺腫瘍

この腫瘍は、特に避妊手術を行っていない雌の犬や猫に多く見られます。良性の乳腺腫瘍も存在しますが、乳腺がんと呼ばれる悪性のものも多いため、早期発見と外科的な切除が推奨されます。

 

・リンパ腫

リンパ腫は免疫系の一部であるリンパ球が異常に増殖する悪性腫瘍です。犬と猫どちらにも発生しやすく、進行すると全身に影響を与え、リンパ節や臓器にまで広がることがあります。治療としては、主に化学療法が用いられます。

 

・口腔内腫瘍

犬や猫の口腔内に発生する腫瘍も注意が必要で、特にメラノーマ扁平上皮がんがよく見られます。

 

これらの腫瘍は口の中で急速に広がり、出血や口臭、さらには摂食困難などの症状を引き起こすことがあります。

 

 

愛犬や愛猫の腫瘍に気づくためのチェックポイント


 

腫瘍は早期に発見することで、治療の効果が大きく変わります。日常的にセルフチェックを習慣づけることで、愛犬・愛猫の腫瘍にいち早く気づくことができるかもしれません。

 

ここでは、簡単に行えるチェックポイントをご紹介します。

 

<全身に触る習慣をつける>

毎日、愛犬・愛猫を撫でるときには、全身を優しく触ることを意識してみてください。

 

特に、首、脇の下、背中、お腹、足などの部位を軽く揉むように触れることで、しこりや腫れがないか確認することができます。リラックスした時間を楽しみながらできるので、無理なく続けられるでしょう。

 

 

<皮膚の状態をチェック>

皮膚にできる腫瘍は比較的見つけやすいので、定期的に皮膚の状態も確認することが大切です。例えば、黒色赤色に変色した部分、ただれ潰瘍のような異常が見られる場合は、すぐに動物病院に相談しましょう。

 

また、しこりが硬くなっている、あるいは急速に大きくなっていると感じたときも、注意が必要です。

 

 

<行動の変化に注意>

腫瘍は体内にも発生するため、見た目だけでは気づきにくいことがあります。そこで、行動の変化にも注目しましょう。

 

例えば、食欲の減少、元気がない、足を引きずる、不自然に体を舐めるといった行動は、腫瘍による体調不良のサインである可能性があります。

 

 

<体重の急激な変化>

急激な体重の減少や増加も、腫瘍の兆候かもしれません。特に腫瘍が内臓にできた場合、栄養が十分に吸収されず、体重が減る傾向があります。

 

日常的に体重を確認し、急な変化がないかチェックする習慣をつけるとよいでしょう。

 

 

<口腔内のチェック>

特に口腔内腫瘍は見過ごされがちなので、定期的に愛犬・愛猫の口の中をチェックすることが大切です。歯茎や舌にしこりがないか、出血や口臭の悪化がないかも確認しましょう。

 

 

<排泄物の変化>

腸や膀胱などに腫瘍ができた場合、便や尿に血が混ざる便の形が変わるなどの変化が表れることがあります。これらの排泄物の変化も、日常的にチェックしておくことで、腫瘍の早期発見に繋がるかもしれません。

 

 

腫瘍が見つかったらどうする?|知っておきたい初期対応


 

愛犬や愛猫に腫瘍を見つけたときは、驚かずに冷静に対応することが大切です。少し落ち着いて、次のステップを参考にしてみてください。

 

1.見つけたときにやるべきこと

腫瘍のようなしこりを見つけたとき、すぐに慌てる必要はありません。まずは、できるだけそのままの状態で観察しましょう。大きさ、形、硬さ、色などをメモに残しておくと役に立ちます。また、写真を撮って記録しておくことで、後から確認しやすくなります。

 

2.動物病院へ相談する

たとえ腫瘍が小さくても、早めに動物病院に行くことをおすすめします。悪性腫瘍である場合、早期発見と早期治療が大切です。予約を入れたら、その間に以下の内容をまとめておくとよいでしょう。

 

 

<診察時に役立つポイント>

正確な情報を伝える

腫瘍に気づいた日時やその後の変化をできるだけ詳しく伝えるようにしましょう。腫瘍の大きさや硬さ、触ったときの愛犬・愛猫の様子なども、獣医師に話すと診断がスムーズです。

 

過去の病歴があれば伝える

もし過去に腫瘍や他の病気の治療を受けたことがあれば、その情報を獣医師に知らせることが大切です。治療方針を決める参考になることが多いです。

 

記録や写真を持参する

自宅で撮影した写真やメモを持って行くと、獣医師が腫瘍の変化を正確に把握でき、診断がより効果的に行えます。

 

 

腫瘍診断の流れ|動物病院で行う検査とは?


 

動物病院では、腫瘍の診断が以下のステップで進められます。

 

1.触診

まず、獣医師が腫瘍の触診を行います。腫瘍の大きさ、硬さ、そして可動性(動くかどうか)を確認し、初期段階で腫瘍が良性か悪性かの判断を試みます。

一般的に、良性の腫瘍は柔らかく、動きやすいことが多いのに対し、悪性の腫瘍は硬く、動かないことが多いです。ただし、これはあくまでも傾向であり、触診だけで確定的な判断はできません。

 

 

2.細胞診(バイオプシー)

腫瘍の性質を詳しく調べるために、細胞診や組織生検が行われます。細い針を使って腫瘍から細胞を採取し、顕微鏡でその細胞を検査します。細胞診は比較的短時間で結果が得られますが、場合によってはより詳細な情報を得るために組織生検が必要になることもあります。

 

 

3.血液検査

血液検査は、腫瘍が体内の他の臓器に影響を及ぼしていないか確認するために行います。特に悪性腫瘍の場合、全身に影響を及ぼすことがあるため、血液検査は重要な診断の一部です。

 

 

4.画像診断

腫瘍の正確な位置や広がりを把握するために、X線や超音波検査が行われます。さらに必要に応じて、CTスキャンやMRIが使用されることもあります。これらの画像診断によって、腫瘍の転移や他の臓器への影響が確認され、手術の必要性などが判断されます。

 

 

腫瘍治療の選択肢|手術・化学療法・放射線治療について詳しく解説


 

腫瘍治療には、さまざまな方法があり、腫瘍の種類や進行度、そして全身の状態によって最適な治療法が選ばれます。ここでは、代表的な手術、化学療法、放射線療法の概要と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

 

<手術>

手術による治療は、腫瘍を外科的に切除する方法で、特に良性腫瘍や悪性腫瘍の初期段階でよく選ばれる治療法です。腫瘍が他の組織や臓器に広がっていない場合、手術で完全に取り除くことが目指されます。

 

■メリット

・腫瘍を物理的に完全に除去できる可能性が高い。

・一度の手術で治癒する場合があり、再発のリスクが少ない。

・悪性腫瘍の場合、転移がない段階での早期治療が可能。

 

■デメリット

・手術自体に麻酔リスクや、術後の感染リスクが伴う。

・進行した腫瘍や、広範囲に浸潤している腫瘍は手術が難しい。

・再発の可能性がゼロではなく、術後の経過観察が必要。

 

 

<化学療法>

化学療法(抗がん剤治療)は、薬剤を使って腫瘍細胞の増殖を抑える治療法です。特に悪性腫瘍や転移がある腫瘍に対して用いられ全身に効果を及ぼすため、手術が難しい腫瘍にも効果が期待されます。

 

■メリット

・手術ができない腫瘍や、全身に広がった転移を抑えることができる。

・手術後の補助療法として、ほかの治療法と併用可能。

・症状の緩和や進行の遅延に効果を発揮する。

 

■デメリット

・副作用(嘔吐、下痢、食欲不振、免疫抑制など)が発生する可能性がある。

・長期間の治療が必要で、定期的な通院が必要になる。

・すべての腫瘍に効果があるわけではない。

 

 

<放射線療法>

放射線治療は、放射線を腫瘍に照射して、腫瘍細胞を破壊する治療方法です。

特に、局所的な腫瘍や、手術で取り除けない腫瘍、または化学療法が難しい腫瘍に対して効果が期待されます。

 

■メリット

・局所的な治療に適しており、周囲の正常な組織に対するダメージが少ない。

・手術が難しい部位の腫瘍にも治療を行える。

・侵襲が少なく、比較的短期間で効果が期待できる。

 

■デメリット

・照射による副作用(皮膚炎、倦怠感など)が起こることがある。

・複数回の治療が必要で、定期的な通院が必要になる。

・放射線治療の設備を備えている施設が限られており、治療場所が制限されることがある。

 

 

当院の事例


 

<腎臓の悪性腫瘍の治療例>

4歳の雌のmix猫で、かかりつけの動物病院で腎臓に腫瘍が発見され、超音波検査と細胞診により、腎細胞癌の疑いがありました。さらに、腫瘍の影響で赤血球増加症も見られたため、手術前に瀉血(読み:しゃけつ/血を抜く処置)を行いました。

 

その後、右腎臓の摘出手術を実施し、手術は無事成功。病理検査の結果、腎腺癌と確定しました。術後1年が経過しましたが、現在も健康状態は良好です。

 

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<乳腺腫瘍の摘出手術>

14歳の高齢犬で、3年前から乳腺腫瘍が腫れ上がり、1年前には腫瘍の壊死や激しい悪臭が現れるまでに悪化していました。

 

腫瘍の影響で体重も激減していましたが、院長の「大丈夫」の言葉を信じ、飼い主様は摘出手術を決断。手術は成功し、悪臭も消え、生活の質が大きく改善されました。

 

体重も増え、痛みから解放された犬は元気に階段を駆け上がるまでに回復。術後半年が経過し、経過は良好です。

 

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まとめ


 

腫瘍は、愛犬や愛猫にとって深刻な病気になることがありますが、早期発見と適切な治療によって、生活の質を大きく向上させることができます。腫瘍には良性と悪性があり、見つけた際にはできるだけ早く獣医師に診てもらい、適切な検査や治療を受けることが重要です。

 

治療法としては、手術、化学療法、放射線治療などさまざまな選択肢があり、腫瘍の種類や進行度に応じて最適な方法が選ばれます。

 

普段から健康チェックを習慣にし、もし腫瘍が見つかった場合は、慌てずに冷静に対応しましょう。

 

もしご心配なことがあれば、当院にいつでもご相談ください。

 

 

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