3月9日、10日と獣医皮膚科学会に参加してきました。
会場は両国、スカイツリーが間近に見え、大江戸博物館の大きさに圧倒されました。
ところが会場内はもっと圧倒されたのが、参加する人の多さです。
約300名ほどが入るであろう会場が立見があるほどの獣医師が集まっており、皆さんが真剣に学んでいる環境はやはり刺激を受けますし、最近はやりのWebセミナーにはない緊張感もあって勉強にも身が入りました。
さて、今回のトピックスは皮膚免疫ということで、アトピー性皮膚炎で得たトピックスを報告いたします。
アトピー性皮膚炎のメカニズムで押さえておきたいポイントは3つです。
・皮膚のバリア機能異常
・リンパ球からの炎症性サイトカインの放出
・掻把行動による原発疹の装飾
これらが関係することで悪循環により皮膚がどんどん悪くなります。
そしてアトピー性皮膚炎は根本的には治癒できるものではありません。上手に付き合っていく必要があります。
ですので、皮膚のバリア機能を整えるため、シャンプー療法や細胞間脂質の原料を補充するための食事療法、皮膚の炎症を抑制し、かゆみを抑える処置を行うことが必要となります。
その方法は現在の獣医学では選択肢が多岐にわたるため、それを組み合わせてその子に合った治療法をオーダーメイドで計画します。たとえ同じような症状であっても全く同じ治療計画でうまくいくとは限りません。
ですのでうまく維持していたとしても定期的に受診し、少しでも気になることがあれば獣医師に相談することをお勧めいたします。
余談ですが、、
例えば、シャンプーやトリミングした直後にフケが大量に出るといった経験をされた方は少なくないと思います。
これは皮膚のバリア機能が極端に破綻している場合に起こる現象です。
要因としてはシャンプーや温浴の性質と現在の皮膚の状況がマッチしていない場合や、バリア機能の破綻のため皮膚のターンオーバーが異常促進していることにより通常であれば緩徐に脱落する角質が皮膚表面に付着していてそれが急激に脱落した場合が考えられます。
この場合は前述したとおりバリア機能の破綻が原因のことが多いのでターンオーバーが整う最低3週間は週に1度保湿を重点に置いたスキンケアの継続をお勧めいたします。
皮膚科診療で大切なことは診断をつけること、そしてその診断に行き着くまでにいくつかの診断を目的とした治療をし、その反応を診ることが非常に重要です。そのため時間がかかることが多く、診断までに1年の経過を辿ることも少なくありません(もちろん意味のある1年です)。
根気が必要なところも多いですが、治療の目的や計画を獣医師と密にコミュニケーションをとりながら皮膚の状態を良い状態にしてまいりましょう。